あのぅ、すみません...そもそも「MAD」って、なんですか?
【2023年4月28日来訪】
前回に引き続き、ニューヨーク遠征の記録です。東京ではありませんゴメンナサイ。
ニューヨークといえば、世界でも有数な美術館・博物館が豊富なアートの街。
有名なのは「メトロポリタン美術館(通称:MET)」。
大英博物館(ロンドン)、ルーヴル美術館(パリ)と並ぶ、「世界三大美術館」のひとつです。
そして、前回の記事でご紹介した、「ニューヨーク近代美術館(通称:MOMA)」。
他にも、フランク・ロイド・ライト設計の建物が目を引く「グッゲンハイム美術館」、
ニューヨークで2番目に大きい「ブルックリン美術館」など、ネームバリューのあるスポットが目白押しです。
ところでみなさん、「通称:MAD」と呼ばれている美術館をご存じでしょうか?
正式名は「Museum of Arts and Design(ミュージアム オブ アーツ アンド デザイン)」。
直訳すると、「芸術とデザインのミュージアム」です。
現代的で革新的な工芸、芸術、デザインに関するコレクション展示をしています。
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アメリカの慈善家であり、工芸品のパトロンであったアイリーン・オズボーン・ウェッブ(AileenOsborn Webb)により、1956年にMuseum of Contemporary Craftsが設立され、1979 年にAmerican Craft Museumを経たのちに、
2002年より現在のMuseum of Arts and Designとなりました。
美術館はセントラルパークの南西端、コロンバスサークルに面した場所にあります。
そこは、エネルギッシュな作品のオンパレードだった!!
2023年4月28日来訪時は「FUNK YOU TOO!」展が開催されていて(現在終了)、
1960年代から現代までの粘土や陶器の作品などが50点ほど展示されていました。
トップ写真、天井に届くほど大きな女性「Questioning Woman 1」や、ピンク色のくまちゃんがキュートな「Baby Bear Loves Alake」は、
子どもが作ったようなダイナミックなテクスチャーと、あたたかみのある温度感、妙に親近感が沸きます。カラーリングも大胆で、とにかくカワイイ!
「きっと作るときも楽しそう!私もやってみたい!」と、心が弾む作品たちです。
赤い車がレンガに突入し、徐々にレンガに変形していくのが面白い、
「Metamorphosis of a Car Kiln」。
デザインとその精巧な作りが目を引きますが、男子生徒は「窯造りの技術」を学ぶことを推奨され、女子生徒は「デザインなどの装飾技術」を学ぶべきとされた時代背景があり、その社会的な性差別労働に対してのメッセージです。
アーティストになりたい男性(赤い車)が窯(レンガ)に変身していく、
社会通念によって「男性的イメージ」を強引に上塗りさせられる姿は、風刺的であり、どこかもの悲しさがあります。
「Fake」は、金色でクラシカルな形の花瓶に、西部開拓時代の女性の写真をプリントしているのかと思いきや...まじまじと見ると「これ、オジサンじゃん!」と、ビックリする作品。
作者・Grayson Perryが、自分の分身としている女性クレアに扮し、女装した写真がプリントされています。
クレアは、戦争や殺人などの男性的な暴力の描画に囲まれていて、彼の幼少期や育ってきた家庭環境が色濃く作品に影響されていることがよくわかります。
遠くから見ていると、華やかで正統派な印象だったものが、
近づいて一歩踏み込めば、そこが一転して、
叫びが聞こえてくるような、苦しみの世界に変貌してしまいます。
ジェンダー、弱者、アイデンティティについて深く考えさせられます。
黒人の女の子の絵画のように見える、「Lyric with a Lollipop」。
手工芸品であるキルティングが、色あざやかに黒人の人生を称えるキルトポートレートとなっています。
Bisa Butlerは、キルティングをアートに変革させたファイバーアーティストです。
同じように、テキスタイルをアートに昇華させたTed Hallman。
子宮のような瞑想空間「Meditation Environment」は、展示フロアの空気感をガラリと変えてしまう異様な存在感がありました。
大御所のメトロポリタン美術館やMOMAでは、なかなかお目にかかれない、
個性がキラリと光るコレクションばかりです。
ファッションの企画展が、とにかく魅力的なMAD
MADはファッションのコレクション展示も素敵です。
2023年4月28日来訪時に開催していた「Generation Paper」展(現在終了)。
1960年代に流行した、不織布製の「ペーパードレス」が60点以上展示されていました。
60年代のビビッドカラーやミニ丈、Aラインのデザインがとてもカワイイ!
企業の広告媒体として、商品のロゴが印刷されていたり、
著名なデザイナーが制作したパフォーマンス的媒体ツールでもありました。
ペーパードレスは使い捨てで価格も安いため、当時のアメリカの「大量消費」時代とリンクし、大人気となりましたが、
そこはペーパーのため、風に吹かれると大きく膨らんでしまったり、パーティーで男性からわざと水をかけられたり、破れるリスクもあったので、人気はそう長くは続かなかったそうです。
MADとの出会いは、ジュエリーから
筆者が、MADを知るきっかけとなったのは、ジュエリーでした。
自身の作品「Colors」をインスタグラムに投稿していたら、MADのジュエリー部門のキュレーターからダイレクトメールが送られてきたのです。
「Colors」を気に入ったようで、画像データが欲しいとのことでした。
ただ、「Colors」は200種類デザインがあり、連絡をもらった当時2021年は、まだ制作途中だったため、すべて完成したらデータを送る約束をして、ずっと保留にしていました。
2年後の2023年春にやっと完成したので(遅っ。)、
約束通りに、イメージ画像を相手へ送信(ご本人はきっと忘れてたはず)。
毎年4月下旬に、新進ジュエリーアーティストを集めて展示・販売会を行う
「MAD About Jewelry」というイベントが開催されるので、その見学も兼ねて、
MADへ初めて来訪しました。
会場では、キュレーターに会うことができて、座って少し話もできました。
彼女のおかげで、こんな素敵な美術館に出会えたことは実にラッキーでした。
MADは、スペシャルなものからコンテンポラリーまで、ジュエリーのコレクションに
非常に力を入れています。
ジュエリーがお好きな方は、今後ぜひチェックしていただきたい美術館です。
ガゼン気になる、注目のアーティスト
数あるコレクションの中で、強く印象に残った2作品を最後にご紹介します。
釉薬が塗られた陶器の「No Names」は、白一色。造形で繊細に表現されています。
Coille Hoovenは、家庭のストーリーや、見過ごされがちな女性の仕事(家事、料理、掃除、子育て)、女性らしさを求められる風習などに対して、フェミニストの理想を陶器で探求しています。
「No Names」というタイトル、布を頭にかぶる女性といい、
家庭の中でふとした瞬間に訪れる、女性の「孤独感」を感じました。
それが、料理や生活で使う家庭的な磁器で作られていることにも意味があります。
女性たちに、非常に刺さるアーティストなのではないでしょうか。
赤土色で、流れるような有機的フォルムが印象的な「Taxonomia」は、
「バイオアート」と呼ばれる分野の作品です。
Armarinhos Teixeiraは、自然環境や生物、生態学の観察から構造と機能を研究して、
科学と自然環境が「共存」してゆく未来に向け、アートを生み出していきます。
自然の美しさ・ダイナミックさを表現しながらも、「畏怖」を感じます。
それらがウネリとなって、その中に飲み込まれてしまいそうな引力のある作品です。
初めて目にしたバイオアートのパワフルさに驚かされました。
これからも注目していきたいアーティストです。
フラリといける気軽さが◎、でも企画展のときは要注意!
メトロポリタン美術館やMOMAよりも小規模で、ボリュームがちょうどよいMAD。
オンラインで事前予約をしなくても、当日、直接美術館へ行ってチケットを買って入場ができます。
ただ、注意したいのは、現在開催中(~2024 年 3 月 24 日まで)の、
「テイラー・スウィフト:ストーリーテラー」展のような、人気企画展の場合には、
時間指定のオンライン事前予約が必要となり、チケット代金も異なります。
最新情報は、MADのWebサイトにて必ずご確認ください。
【一般入場券】
チケット料金 | Buy(通常) | Online(オンライン) |
---|---|---|
Adult(一般) | $20 | $20 |
Senior(シニア)※1 | $16 | $16 |
Student(学生)※2 | $14 | $14 |
Child(小人)※3 | $0 | $0 |
※1 65歳以上
※2 学校のメールアドレスやIDを持っている場合
※3 12歳以下
(2024年1月現在)
Museum of Arts and Design(ミュージアムオブアーツアンドデザイン)
「通称:MAD」と親しまれる美術館は、もちろん「狂気的」ではありませんでした。
アートの楽しさとエネルギーに溢れていて、
面白くて、刺激的な、発信力のあるミュージアムです。
MADの動向に、これからも目が離せません。
ミュージアムショップは、工芸品やジュエリーを扱うだけあり、
オシャレな食器や雑貨類、ジュエリーなど、センスのよいアイテムが盛り沢山!
そこは、眼福の空間ですので、ぜひともお立ち寄りください。
Museum of Arts and Design(ミュージアム オブ アーツ アンド デザイン)
2 Columbus Cir, New York, NY 10019